夜空は一億のため息に覆われて、誰もがいつも何かに試されて、何もかも思いどおりに行かずにうつむいて、そびえ立つ見えない壁に力尽きて、そして君は泣いて。震えてる肩を抱きしめても救えないほど憔悴し、それでも君はまた立ち上がる。痛みは生きていく為の力に変わる。「今を戦えない者に、次や未来を語る資格はない」 開店前。ホールは空虚と悲哀と沈黙に支配されていた。あるものは一点を見つめ、あるものは静かに涙し、あるものはうつむいたまま動けない。壁にかけられた緑と白と赤のトリコローレの旗が、風もないのに揺れた。彼らは絶対的な存在を突然失った。司令塔を失ったサッカーチームのように、機能的に時間を進めていく方法を見失いつつあった。私はこの店と全てのスタッフを愛し、人々の口に鮮やかな幸せを運び続けてきたオーナー兼料理長に頼まれて、このレストランへやって来た。そのオーナーはこの世界にはいない。私達の住む世界の住人になっている。彼は条件を満たしてたのでまだこの世界に住む彼が望む人の悲しみや苦しみを取り除く事を1度だけ私達に依頼することが出来た。分厚い雲に覆われて今にも崩れ泣き出しそうな空。その日も店を開ける事になったはオーナーの意思だった。彼の最後の言葉を彼の最愛の妻がスタッフ全員に伝え、スタッフはオーナーの意志に応えることになった。オーナーは彼の愛するスタッフに全幅の信頼を置いていた。たとえ自分がいなくても、来店する全ての人々に幸せを提供できると確信を持っていた。私は意識を閉じ、その空間に浮かぶ感情を感じた。不安、混乱、絶望。スタッフそれぞれの意識を感じながら私は色鮮やかなイタリア国旗に触れた。「どうすれば・・・・。」~ 諦めるより夢を見る方が性に合っているだろ? ~「どうすれば・・・・。」~ 思いついた決断の中で最も難しいものを選択しなさい。 ~「どうすれば・・・・。」~ 自分自身の支えなり、変化を与えてくれるもの、それが希望だ。 これがあるからこそ努力できるし成長できるんだ。~「どうすれば・・・・。」~ 夢中になることが大切だから。 面倒くさいと感じたり、情熱を失ってしまったら、何もかもが終わりだからね。~夢、希望、情熱。彼の言葉が、もう一度忘れかけていたものを呼び起こす。オーナーが生涯をかけ大切にしたこの店の明日を守ろう。私はバラバラだったチームがまた1つになるのを感じ、壁に掛かった3色の美しい旗から手を離した。人間の人生など私達に言わせれば儚いものだがそこに存在する思念の強さは計り知れないものがあるなと思った。私の足元にサッカーボールが転がってきた。オーナーの声が聞こえる。「試合終了のホイッスルは、次の試合開始のホイッスルだ。」私は空へ向ってボールを蹴り上げた。ボールは分厚い雲に穴を開け天へ消えた。やがて雲は去りまぶしい太陽が顔が見せるだろう。